豊潤 496 のこと

キリンビールから SPRING VALLEY (スプリングバレー) 豊潤<496> が発売されました。クラフトビールと名乗りつつ、大手のキリンビールから発売されたことで物議を醸したこのビール。肝心のその味と「クラフトビールとはなんぞや?」ということについて、わたくしの思うところを書かせていただきます。

豊潤496

キリンを代表するプレミアムビールに

ビール好きにとってまず気になるのはその味ですよね。飲んだ感想は・・麦の旨味と深みのある味わいで、ものすごく美味しいです。エールなの?ラガーなの?もしかしてIPA?と迷ってしまうぐらい、素晴らしいバランスを兼ね備えた、ありそうで無かった個性的な味わいです。このことについては公式サイトでも「世界のどこにもないビールを目指して造った」と公言しています。

大手ビール会社のビール、ということで言っちゃうと、サントリービールに『プレミアムモルツ』があるように、キリンビールのプレミアムビールといえば『豊潤496』になるんだろうな、と思いました。味わいも『プレミアムモルツ』に近いものがあると私は思います。

製法としては、ホップを4種類使って、麦芽の量はキリンラガービールと比べて1.5倍を使用しているとのこと。あとは技術力なんでしょうね。価格は近所の酒販大手やまやさんで272円(税込)。『プレミアムモルツ』よりはちょっとだけ高いかな、という価格になっています。

豊潤496
缶には「キリンビールの工場で製造しています」の文字が・・

スプリングバレーブルワリーとは?

このビールのことを正確に知るためにはネーミングにも使われている『スプリングバレーブルワリー』のことを理解しなくてはなりません。『スプリングバレーブルワリー』はキリンビールの社内ベンチャーとして誕生したクラフトビールのブルワリーです。詳しくは2021年2月19日のブログ『スプリングバレーブルワリーとキリンの関係』の中で書きましたので、よろしかったらご覧になってみてください。

この『スプリングバレーブルワリー』から発売されていた『496』というフラッグシップビールが、大元のキリンビールから新たに『SPRING VALLEY (スプリングバレー) 豊潤<496>』として発売されたというわけです。キリンビールのプレスリリースを読むと「現行の『496』をベースに誕生した商品。コンセプトや味のバランスなどはそのままに、豊潤ながらも後味が綺麗で、飲み飽きない味わいを実現した」とあります。とすると元々あった『496』とは味が違う可能性がありますが、私はどちらも飲みましたが違いはわからなかったです。ふたつを同時に飲み比べればもしかして違いがわかるのかもしれませんが・・

現在、元々あった『496』は『original 496』と名前を変えて、キリンの種類通販サイト『DRINX』から今でも発売されています。価格は330mkのビン入りで税込400円以上するので、缶の豊潤496と比べるとお高いイメージにです。逆に言うと、缶の『豊潤496』はものすごくお買い得です。

豊潤496

クラフトビールとはなんぞや?

人気のクラフトビールメーカー『ヤッホーブルーイング』が制作した「クラフトビールのすゝめ」というパンフレットをみると、クラフトビールについて「クラフトビールとは、小規模な醸造所がつくる、バラエティ豊かで個性的なビールを指します。」と定義されています。キリンビールは小規模な醸造所じゃないじゃん!というツッコミが当然入るわけで、そのキリンビールが「クラフトビール」と言い切った商品をリリースしたことで、クラフトビール好きのあいだで物議を醸したというのが、今回の騒動の真相です。

現在、クラフトビールの市場は、コロナ禍によりおうち時間が増えたことで、大きく売上が伸びています。「キリンビールはこれに便乗しただけじゃん!」と否定的にとらえるのか、「キリンビールがクラフトビールの市場を大きく成長させてくれる!」と肯定的にとらえるのか、どちらの考え方もあるでしょう。

私は正直どちらの気持ちもありますが、否定的な部分も、零細企業の経営者としてキリンビールという巨大企業をとらえるならば「さすがだな」と感心してしまいます。

キリンビールのおかげでクラフトビールの市場がさらに盛り上がるのか、小規模なクラフトビールメーカーが大手ビールメーカーに食われてしまうという結果になるのか・・結果が出るにはもう少し時間がかかりそうです。後者の結果にはなってほしくないなと切に願いつつ、ひとりのビール好きの立場で、その行く末を見守りたいと思います。